プログラミングの勉強なんて大きくなってからでもいいのに、どうしてわざわざ子供の時から習わせるの?
こんなふうに疑問に思われたことはないですか?
この記事では、2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化になった背景についてできるだけわかりやすく解説したいと思います。
その前に・・・
- 1970年代「詰め込み教育」
- 1980年代「第1次ゆとり教育」
- 1990年代「個性を生かす教育」
- 2000年代「ゆとり教育」
- 2000年代「脱ゆとり教育」
これらは、文部科学省の「学習指導要領」によって決められた教育の方針を言い表した言葉です。
「学習指導要領」は約10年に一度、改訂が行われ、全国の小中高の学校で行われる教育カリキュラムを統一します。
こうした「〇〇教育」という言葉を眺めていると、なんとなくその時代の価値観や社会問題が見えてきます。
そして2020年代の目玉は「プログラミング教育」
「プログラミング教育」は、2017年に行われた「新小学校学習指導要領」の改訂に伴い2020年度から実施されています。
では、プログラミング教育はこの時代のどんな背景を浮き彫りにしているのでしょうか?
この記事では、
- プログラミング教育を必修化にせざるを得なかった時代背景
- 文部科学省がプログラミング教育で本当にやりたいこと
について、
IT企業のオウンドメディアで専属ライターを勤める筆者が、文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」から掘り下げてわかりやすく説明します。
プログラミング教育が必修化になった背景
プログラミング教育が必修化になった背景を3つ挙げることができます。
- IT化が急速に進んだ
- AIの進歩でこれまでの常識が通用しなくなる
- IT人材不足の深刻な不足
では詳しく見ていきましょう。
①IT化が急速に進んだ
1990年代まで、主な通信の手段は固定電話とFAXでした。
2000年代に入り、インターネットと携帯電話が急速に普及してわたしたちの生活も大きく変化しました。
そして、2007年(日本発売は2008年)アップル社がiPhoneを発表。
スマートフォンの登場とインターネットの高速化によって、わたしたちの暮らしは、歴史上かつてないほどのスピードで何もかも大きく変化しました。
こうした社会変化は人間の予測を超える速度で展開しています。
予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い、関わり合い、子供たちが可能性を発揮し、よりよい社会の創り手になる力を育む学校教育が必要だ
こうした時代背景で、プログラミング教育が提唱されました。
②AIの進歩でこれまでの常識が通用しなくなる
AI(人工知能)の急速な進化が人間の職業を奪うのではないかとも言われています。
オックスフォード大学の准教授のマイケル・オズボーン氏は「今後10〜20年で、AIが判断を行い、これまで人の手で行なってきた仕事の半数近くが自動化される可能性が高い」と語っています。
これは18世紀の最初の産業革命以降4番目となる産業革命(第四次産業革命)です。
つまり、いつまでも戦後型の学校教育を行っていたのでは、子供たちは新時代に生きていくことができません。
海外ではすでに以前からSTEM教育が取り入れられていて、子供たちは学校でプログラミングを学んでいます。
逆に言うと日本のIT教育は先進国の中で非常に遅れているのです。
③IT人材の深刻な不足
これまで見てきたように、IT産業の需要はかつてないほど増加しています。
しかし、急速なIT需要にエンジニアの供給が全く追いついていないのが現状です。
経済産業省の試算によると、日本のIT人材は2030年までに最大で79万人不足すると言われています。
多くのIT技術者が定年退職し、少子高齢化の日本では、ITエンジニアのなり手がますます減っていくことが予想されます。
世界で日本は完全にIT後進国
2021年のIMD世界デジタル競争力ランキングでは、日本は中国や韓国に大きな差をつけられて世界第28位という残念な結果になっています。
毎年連続で1位のアメリカは、2000年代初頭から先程も触れたSTEM教育に巨額の予算を投じて、IT人材の育成に力を入れてきました。
日本も「プログラミング教育」という形でようやく重い腰をあげて、未来のIT人材の育成に取り組みだしたと考えることができます。
小学校プログラミング教育で子供たちに学ばせたいこと
文部科学省は小学校でのプログラミング教育で、子供たちにどんなことを学ばせたいと思っているのでしょうか。
期待されているのは以下の点です。
- 子供たちがコンピュータの仕組みを理解して活用していく
- 社会を生き抜くための力を育む
では具体的に見ていきましょう。
子供たちがコンピュータの仕組みを理解して活用していく
駅の自動改札、踏切、信号。
スマート家電、タブレット、スマホ、コンピュータ、ゲーム、自動車。
わたしたちの身の回りにある便利なものにはすべてコンピュータが使われ、コンピュータによって制御されています。
コンピュータは社会を便利で豊かにしてきました。
しかし、エンジニアでもない限り、下手をするとわたしたちはコンピュータについて何も知りません。
コンピュータは魔法の箱、中身がわからないブラックボックスになっています。
文部科学省の主張
「小学校プログラミング教育の手引」はこのように主張しています。
子供たちがこれからの社会を生きていくためには、コンピュータをより適切に、効果的に活用していかなければならない。
コンピュータに圧倒されてしまうのではなく、主体的に活用するということです。
そのために何ができるか?
コンピュータはプログラムで動いているというコンピュータのしくみを知ることが重要だ
仕組みがわかれば、コンピュータはブラックボックスではなくなり、より主体的に活用することができるというわけです。
社会を生き抜くための力を育む
コンピュータに関する教育は子供たちの可能性を広げます。
若くして起業する人も出てくるでしょう。
「小学校プログラミング教育の手引」によると、
プログラミング教育は、子供たちが将来、社会で活躍するきっかけにもつながる
と期待されています。
コンピュータを理解し、上手に活用していく力を身につけることは、これからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どの職業につくとしても極めて重要です。
プログラミング教育を通して
プログラミング的思考 = 物事を論理的に考えて力や問題を解決する能力
を身に着けさせることを目指しています。
しかしどうしても、これが空を掴むような抽象的な言い方に聞こえてしまいます。
まとめ
この記事では、プログラミング学習が2020年度から小学校で必修化になった背景について見てきました。
- IT化が急速に進んだ
- AIの進歩でこれまでの常識が通用しなくなる
- IT人材不足の深刻な不足
プログラミング教育に期待されている点は以下のとおりです。
- 子供たちがコンピュータの仕組みを理解して活用していく
- 社会を生き抜くための力を育む
小学校プログラミング教育は、
子供たちにコンピュータはプログラムで制御されているという基本的なしくみを理解させるところからはじめて、世の中を変えていこうとする取り組み
ということができます。
わたしは個人的にはプログラミング教育で行おうとしていること自体は悪くないと思っています。
プログラミングネイティブ世代は果たして日本を良くしていくことができるのでしょうか。
ところが始まったばかりのプログラミング教育は理想とは裏腹に課題が山積みで、今の取り組み方ではとうてい中途半端な成果しか得られないことが懸念されています。
もしあなたのご家庭で、早いうちから周りと差をつけておきたいとお考えであれば、プログラミングスクールを活用するのも選択肢の一つです。現状では、小学校プログラミング教育から得られるところがほとんどないからです。
将来どんな道を進むことになるとしても、プログラミングスキルを身に着けておけば、子供たちは将来食いっぱぐれることはありません。
記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
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