2020年度からプログラミング教育が小学校で全面実施になりました。
続いて、2021年に中学校の「技術科」、2022年に高校の「情報Ⅰ」でプログラミングが必修化になり、さらには2025年の大学入試から高度なプログラミングの知識を問う「情報」の内容が含まれることになりました。
え、そうなんですか!?大学入試にも?
このようにプログラミング教育の必修化はすでに行われているわけですが、子供たちが実際にどんなプログラミング授業を受けているのか、プログラミング教育の実施状況についてあまり保護者の方もあまりよくわかっていないというのが現状です。
そこで本記事では、
子どものプログラミング教育の普及活動を推進する「特定非営利活動法人みんなのコード」が2021年7月に全国の小学校教員1037名、小中高生の保護者3000組を対象に行なったインターネットアンケート(実施マクロミル)と保護者へのインタビューを参照させていただき、
小学校プログラミング教育必修化の初年度となる、2020年度におけるプログラミング授業の実施状況と現状についてレポートをまとめたいと思います。
参照:みんなのコード https://code.or.jp/news/10370/
「プログラミング教育ってどうなっているの?」という疑問をお持ちの方はぜひこの記事をご覧ください。
盛り上がらなかったプログラミング教育必修化の初年度の現状
まず、小学校の先生へのアンケート調査によると、
2021年7月までにプログラミング教育を
実施したことがあり、今年度も実施予定 35.5%
実施したことはあるが、今年度は実施しない予定 12.0%
参照:みんなのコード https://code.or.jp/news/10370/
という結果になりました。
逆にプログラミング授業をまだ実施していないと答えた教員は全体の半数以上の52.6%に上りました。
また保護者へのアンケートでも同様に約半数の子どもたちがプログラミング授業を経験したと答えています。学年別で言うと、小学校低学年での実施は2~30%にとどまり、高学年での実施は60%と多くなっています。
現状では約半数の学校において初年度にはプログラミング教育が行われておらず、今後実施予定が3割、という結果が出ています。
半分近くの学校でプログラミング教育がまだ行われていないんですね。
プログラミング教育必修化の初年度で、盛り上がりの期待もあったと思いますが、なぜこれほどまでに消極的な取り組みになってしまったのでしょうか。
理由は3つ考えられます。
理由①コロナ禍のリモート授業の対応でそれどころではなかった
そう、忘れてはならないのがコロナです。
小学校でプログラミング教育必修化の初年度となった2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックでいきなり4月から全国一斉休校になるという波乱の幕開けを迎えました。
学校は、未曾有のこの状況を乗り切るため、誰も経験したことのないリモート授業の対応に追われることになりました。中には、プリントを配るだけで遠隔授業に対応できなかった学校もあります。
理由②GIGAスクール構想、端末の整備計画の前倒しでそれどころではなかった
GIGAスクール構想とは、2019年12月に文部科学省が提唱した「児童生徒向けの1人1台端末」「高速大容量の通信ネットワーク」を各学校に整備するというICT環境整備計画のことです。
当初5カ年で進める予定でしたが、2020年初頭の一斉休校を受け、いつまた一斉休校になるかもしれない現状に対処するため、2020年度中に端末整備を達成するよう、計画が前倒しになりました。
そのため、学校は急遽タブレットの整備に追われることになります。中にはITが苦手な教師もいて、パスワードの設定も誰かに助けてもらわないとできないという状態でした。
教育委員会は、「端末をとりあえず渡すから学校で活用方法を考えて」という丸投げスタンス。先生たちはまず、そもそもタブレットの使い方からを覚えるところから初めて、どうやってタブレットを使って授業をするのか、そこから初めなければいけない状況でした。
そのため、プログラミング授業は後回し、まだプログラミング教育に意識が向いていないというのが多くの学校の現状です。
理由③プログラミング教育を実施しない学年もあった
アンケートを見ると、高学年での実施は60%と高く、逆に低学年での実施は30%以下という結果になっていることから、アンケートの回答者の関わる学年によってプログラミング教育実施に差があることがわかります。
プログラミング教育は各教科の中で工夫して取り入れられることになりますが、まだ、授業例も少なく、学年や年齢によっては取り入れにくい内容もあるようです。
もう少しノウハウが溜まってくると、全学年に対応した授業例も共有されて、どの学年でもまんべんなく行われるようになるかもしれません。
小学校プログラミング教育の授業はどのように実施されている?
一方、プログラミング教育を実施したことがあると答えた教員も全体の半数近くいます。
プログラミング授業をどんな科目で行なったか、回答を見ると「算数」と「総合的な学習の時間」に集中していて、それ以外の教科では「理科」がやや多いものの、その他の教科ではプログラミング授業があまり行われていなかったことがわかります。
文部科学省の「プログラミング教育の手引」では5年生算数の「正多角形を書く」と6年生理科の「電気の制御」でプログラミング授業の例が挙げられていました。
やはり算数の授業でのプログラミング教育は、やりやすかったのだと思われます。
しかし、理科のプログラミング授業がもう少し行われても良かったかな、という感想もあります。
教員へのインタビューをみると、実施されなかった理由がわかります。
- コンピュータ以外にもマイコンなどのハードウェアの教材が必要になる
- 教材があったとしても、全員分はなく、数人で共用しなければ行けないので感染症対策の面から見送った
などの理由から理科の「電気」での取り組みはあまり多くなかったようです。
プログラミング授業で使用する教材は?
プログラミング授業で使用された教材は、Scratch(スクラッチ)やViscuit(ビスケット)などのビジュアルプログラミング言語が全体の47.1%とやはり多く、続いてロボットを用いたプログラミング授業が33.9%と続いています。
また、コンピュータを使わないアンプラグドの教材も20.3%の割合で使われたことがわかりました。
一つ意外だったのが、19.5%、約2割の先生が「テキスト言語」を使用と答えている点です。テキストプログログラミング言語とは、いわゆるプログラマーがコーディングするのに用いる言語です。
果たして小学生には難しすぎないかな?という疑問があります。
プログラミング授業に対する子どもたちの反応
アンケートで「半数以上の児童が、プログラミングに関心をもっている」と答えた教員が53.7%おり、「一部の児童がプログラミングに関心をもっていると感じている」と回答した教員が38.4%という結果になりました。
つまり、全体の感触としては、プログラミング授業を楽しんだ子もいれば、そうでもない子もいたということになります。
7.7%の教員は「あまりプログラミングに関心のある児童はいない」と回答しています。
アンケートでは教師が授業準備に時間をかけたほど、子どもたちの関心も高く、授業準備に時間がかけられなかった教員ほど、子どもたちの食いつきも良くないという結果が見られます。
先生の授業の質が子供の食いつきに大きな影響を与えています。
クラス内での格差
子どもたちの間で格差があり、プログラミング教室に通わせてもらっている子は、みんなの先生役を買って自信を持って授業に参加しているのに対して、クラスで2,3人はまったくついていけない子もいるようでした。
原因は
- そもそも勉強そのものが得意ではない
- 家にタブレットもパソコンもなくて操作の仕方がわからない
- 親がITに関心がない家庭環境
という点が観察されています。
特に、親がITに関心がない児童は親の見方の影響を受けて、プログラミング授業に関心を持たないことがデータで明らかになりました。
家庭環境が格差の大きな原因となっています。
今の時代、タブレットやパソコンは贅沢品ではなく必需品
また、家にタブレットやパソコンが無いというのも大きなハンデになってるようです。
ICT教育も標準化されていきますので、家庭でもタブレットの基本的な使い方やパソコンの基本操作ぐらいはできるようにならないと、学校の授業についていくことは難しくなっていきます。
中学のプログラミング授業でも、マウスやキーボードの使い方を全く知らない生徒もいると報告されています。
プログラミングを体験してみよう
子供のプログラミングってどんな事するの?という保護者の方におすすめなのが、子供向けプログラミング教室の無料体験に参加することです。
いろんなスクールが、パソコンの操作、プログラミングを使ったかんたんなゲームづくりなどを無料で体験させてくれます。
費用はかかりませんので、いちど親子で参加してみてはいかがでしょうか?
まとめ
プログラミング教育全面実施の初年度2020年度は、
コロナ禍とGIGAスクール端末の整備の対応に追われ、教員はプログラミング教育どころではなかった
というのが現状です。
2021年度も引き続き、タブレット端末の整備、タブレットを使ったICT授業の進め方など、教員が優先的に準備しなければならないことが山積みで、プログラミング教育はそれができてからになりそうです。
保護者の方へも、子どもたちが学校でどんな授業を受けているのかもあまり伝わっておらず、プログラミング教育は先行きの不安な出だしとなりました。
コロナ禍が完全に落ち着くまでしばらく、見守る必要があります。
本記事では「プログラミング教育実施調査報告書」(みんなのコード)のアンケートデータを参考にさせていただきました。
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