2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化になりました。
これからの子どもたちは、学校でプログラミングを習う時代になりました。
親もプログラミングをやったことがないのに、子どもにできるんだろうか。
プログラミング教育って、何を勉強するの?
プログラミングの成績ってどうやってつけるの?
このように「プログラミング教育」について、いろんな疑問があり、まだ正しく認知されていません。
- 「プログラミング教育」とはいったい何か。
- プログラミング教育のねらい
- プログラミング教育に関する3つの誤解
- 小学校で子どもたちは何を勉強するようになるのか。
そこでこの記事では、文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」の内容に基づき、小学校で必修化になった「プログラミング教育」についてまるっとわかりやすく解説したいと思います。
プログラミング教育とはわかりやすく言うとどういうこと?
「プログラミング教育」と聞いて、いわゆる「プログラマーになるための勉強」を思い浮かべた方もいるかも知れませんが、実はそうではありません。
「プログラミング教育」とは、2020年度から必修化になった「プログラミング的思考」を育む子どもたちへの新しいIT教育です。算数や理科などの科目で簡単なプログラミングをしながら、プログラミングの考え方を使って課題を解決したり、パソコンやITの仕組みを学んでいきます。
中学の「技術」、高校の「情報Ⅰ」でもプログラミングや情報活用の内容が強化され、2025年の大学入学共通テストから、「情報」の範囲から出題されることとなりました。
小学校プログラミング教育では、プログラミングのスキルではなく
子どもたちにプログラミング的思考を身に着けさせることを目的としています。
こうした「ITやプログラミングに関する教育」は、かつての「読み・書き・そろばん」のように、ITが急速に発達した今の時代に子どもたちが社会に出ていくために欠かすことができない必須教育となったわけです。
小学校プログラミング教育のねらい
文部科学省の「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」によると、小学校プログラミング教育には大きく分けて3つのねらいがあります。
- プログラミング的思考を育む
- 社会とコンピュータの関わりを学ぶ
- 各教科の中での学びを確実なものとする
では、順に解説していきます。
①プログラミング的思考を育む
プログラミング教育での1つ目のねらいは
プログラミング的思考を育む
ということです。
プログラミング的思考って何ですか?
「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」では「プログラミング的思考」について次のように定義されています。
プログラミング的思考とは、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、
文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」より
記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、
といったことを論理的に考えていく力
先程少し触れましたが、小学校で学ぶ「プログラミング的思考」とは、
日常生活の中で論理的な思考を用いて何かを成し遂げたり、問題を解決するときに必要な能力
と言うことができます。
言い換えると「プログラミング的思考」とは、ロジカルシンキングのことです。
ここで言う「プログラミング」とは「問題を解決するために取る行動」のことだとイメージすればわかりやすいでしょう。
具体的には、算数や理科などの教科を勉強するときに、Scratch(スクラッチ)やmicro:bit(マイクロビット)などの子ども向けプログラミング作成ツールを使って、正三角形を書いたり、電気を制御するプログラムを作ったりして、プログラミングに触れていきます。
そのプロセスで、プログラミングをするときのような、「論理的な思考力」を使って課題を解決する力を養うことを目的としています。
②社会とコンピュータの関わりを学ぶ
プログラミング教育での2つ目のねらいは、
身の回りで使われている製品にはコンピュータが使われており、コンピュータは人間がプログラムすることによって動く、という基本的なしくみを理解させる
ことです。
わたしたちは、スイッチを押せば、当たり前のように家電が動くことを知っています。
しかし、それがどういうプロセスで動いているのか、ということをあまり考えません。
しかし実際には、人間がプログラムすることによって、機械に望み通りの動きをさせることができます。
こうしたITに関する常識をしっかり教えられなければ、子どもたちにとって便利な機械は得体の知れないブラックボックスになってしまいます。
さらに「小学校プログラミング教育の手引」では
プログラミング教育を通して、身近な問題の解決のために、コンピュータの技術を活用してよりよい社会を築いていこうとする積極的な態度を育てる
こともねらいとして挙げています。
この事の背景には、デジタル競争で日本が世界に遅れを取っているという現状があります。
別の言い方をすれば、プログラミング教育必修化はIT分野で世界に出遅れてしまった日本の将来を担う人材を育てたい、という国の危機感の表われとも取れます。
③各教科での学びを確実なものとする
プログラミング教育の3つ目のねらいは
各教科での学びを確実なものとする
というものです。
プログラミングは算数・理科・社会といった既存の科目の中で教えることになっています。
プログラミングはあくまでも科目を教えるための「手段」の一つに過ぎず、それ自体を「目的」として教えるわけではありません。
結果としてプログラミングの技能を習得することはあっても、それ自体をねらいとしているものではない、というのが文部科学省の見解です。
「プログラミング」での成績をつけることはなく、あくまで各教科の中で成績が付けられることになります。
プログラミング教育に関する3つの誤解
ではここで、小学校プログラミング教育でよく誤解される3つの点をまとめましょう。
- 子どもたちは授業でプログラミングスキルを身につける
- 「プログラミング」という新しい科目ができた
- パソコンやタブレットが使えないとプログラミング教育ができない
誤解その①いわゆる「プログラマー」を養成するわけではない
「プログラミング教育」と聞いてまず思い浮かべるのが、
プログラミング言語を使ってコーディングを行なう、いわゆるプログラミングスキルを勉強することですが、
実はそうではありません。
小学校プログラミング教育は、プログラミングのスキルを身に着けさせることが目的ではありません。
というか、そもそも無理です。
小学校プログラミング教育では
プログラミング的思考を身につけるのが目的で、
その過程で多少プログラミング言語やプログラミングを習うことがあっても、それ自体を目的とするわけではありません。
プログラミング的思考とは、論理的に問題を解決する能力のことです。
なにかの課題を達成するために、①どんな行動が必要かを細かく分解し、②それを整理して、③組み立てて順番通りに上から実行していく、そういう考え方を「プログラミング的思考」と呼んでいます。
また、小学校プログラミング教育で使われるは、Scratch(スクラッチ)やViscuit(ビスケット)のような、ブロックや、絵を組み合わせてプログラミングするビジュアルプログラミング言語が用いられます。
どんなプログラミング教材を使うかは教育指導要領で決められていません。各教育委員会・学校に委ねられています。
誤解その②「プログラミング」という科目を教えるわけではない
これもよくある誤解ですが「プログラミング」という新たな科目ができるわけではありません。
プログラミング教育は、算数や、理科など既存の各教科の授業の中に混ぜ込んで行われます。
例えば
- 小学5年 算数「正多角形」をプログラミングで書く
- 小学6年 理科「電気の制御」暗いときだけ電気がつくようにプログラミングする
- 小学4年 音楽 プログラミングで「リズムづくり」
- 小学3年 図工 プログラミングで書いた絵を動かして「クラスの水族館づくり」
といった具合に、実施されます。
何時間実施すべきか、また何年生から授業を行うかも各学校に任されています。
そのため、「プログラミング」に成績がつけられるわけではなく、あくまでも各教科の学びの中で評価が付けられます。
そもそも、先生たちもプログラミングの素人で、プログラミング教育について研修を受けたり、忙しい教務の合間を縫ってプログラミング授業の準備も行わなければなりません。
現場も相当大変だったと思います。
基本的に先生たちの専門は、国語・算数・理科・社会・などの各教科です。
プログラミングを手段として各教科を教えます。
「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」では
児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動
「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」
となっています。
中学校ではすでに2012年度から「技術・家庭」科の中の「技術」の分野で、プログラミング授業が行われており、2021年度からはプログラミングに関する内容がさらにつけ加えられます。
2022年度より高校では「情報Ⅰ」という新たな科目が新設され、全員必修になります。この中ですべての高校生は共通でプログラミング教育を受けます。
小学校では、中高のように「技術」や「情報」などのプログラミングを教えられる受け皿がないため、各教科を横断した形での実施となったわけです。
誤解その③パソコンを使わない場合もある
プログラミング教育というと、必ず教室にパソコンがあって、生徒一人一人にはタブレットが、という環境を想像しますが、場合によっては電子機器を一切使わない「アンプラグド」の授業を行うこともあります。
小学校低学年では、生活科の科目の中で、パソコンを使わずに紙のカードを並べてプログラミングを行う授業も取り入れられています。
例えば、的確な指示を書いて、友達に「歯磨き」などの動作を実行させる「命令ゲーム」を通して、プログラミングの「順序」という考え方を教える、といった授業になります。
絵本やパズルを教材として使って、プログラミングやコンピュータについて教える教案も考えられています。
このように、小学校プログラミング教育で、パソコンやタブレットが使えないとプログラミング教育ができないというのは誤解です。
実際のところ、各学校へのICTの十分な整備が2020年のプログラミング必修化に間に合わなかったという苦しい事情もあります。
幼児〜小学校低学年向けの、「すごろくでプログラミングが学べる」絵本
小学校プログラミング教育の授業はどのような感じになる?
小学校プログラミング教育は、何年生から何を教える、などの明確なカリキュラムが実は決まっていません。
ある程度のヒントは与えられていますが、各学校に委ねられているのが現状です。
プログラミングの授業は毎週の時間割に組まれているわけでもなく、実際のところ年に20時間程度のボリュームです。
先生たちも、教務に追われて、授業準備のために十分な時間をかけられないという実情もあります。
さらにICT環境の整備が地域によって差があり、十分な高速LAN環境と、パソコンやタブレットの数がそろっていない学校もまだある中でのスタートとなりました。
では、すでに始まったプログラミング教育で実際にどんな教材が使われているでしょうか。
スクラッチなどのビジュアルプログラミング言語
スクラッチ(Scratch)とは、命令が書かれたブロックを組み合わせて、簡易にプログラミングが学べるビジュアルプログラミング言語です。
ビジュアルプログラミング言語とは、
テキストではなく、指示の書かれたブロックや図形などをドラッグ&ドロップしてプログラムを組んでいく子供用のプログラミング言語のことです。
スクラッチは、多くの小学校で導入されています。
スクラッチ以外にもSpringin’(スプリンギン)やViscuit(ビスケット)なども使われています。
スクラッチを使って音楽を作ったり、イラストを書いたり動かしたり、算数や理科の授業でも活用されています。
マイクロビットを使った電気制御
micro:bitはイギリスで使われている、教育用の手のひらサイズの小さなコンピュータボードです。
micro:bitは色々なセンサーが取り付けられています。プログラミング教育の中でも「理科:電気」の分野と相性がよく、多くの学校で取り入れられています。
算数×プログラミング
文部科学省の手引では、小学校5年生の「正多角形の書き方」の中で、プログラミングを用いた授業が紹介されています。
正三角形をプログラミングで書かせたい場合、どのように分解できるでしょうか。
当然「正三角形を書け」ではコンピュータは理解できません。
正三角形を書くためには、
- 辺の長さがすべて等しい
- 角の大きさがすべて60度
という正三角形が持つ性質を用いて、命令を書いていきます。
以下のように作業を細かく分解して、上から順番通りに実行させることにより、正三角形を書くことができます。
このように、自分のやりたいことを実現するために、何が必要かを論理的に考えて、組み合わせていくことが「プログラミング的思考」です。
プログラミング教育はまだ手探りの段階
プログラミング教育はまだ、試行錯誤の段階です。
早いところでは、小学校低学年で音楽の授業にプログラミングを取り入れている学校もあります。
図画工作の時間に書いた絵をプログラミングで動かしたり、国語の授業で取り入れる試みもなされています。
しかし、今後ICT教育の充実、ICTが未整備のところはまずそこから、といった取り組みが必要になってきます。
このため、学校によって取り組み方が異なっており、まだ十分に教え方が共有されていないのが現状です。
プログラミング教育のために親にできること
では、小学生のお子さんをお持ちの親のみなさんはプログラミング教育のためにどんなことをしてあげられるでしょうか。
たとえば、こんなものが役立つかもしれません。
- プログラミングについてわかりやすく学べる本
- 自宅で学べるプログラミング教材
- 子供のプログラミング教室
プログラミング教室に入れなければ子供は授業についていけなくなる、とかそこまで心配する必要はありません。
自宅で気軽にできるところからはじめれば、学校でも自信をもって取り組めるでしょう。
親子で遊びながら、一緒にちょっとやってみるなら、コミュニケーションも取れて一石二鳥です。
プログラミングについてわかりやすく学べる本
子どものプログラミングについて簡単に学べる本についてご紹介します。
最初の手始めとして、Scratch(スクラッチ)の入門書が1冊あればいいでしょう。
小学校1年生では、まだひとりではちょっと早いかもしれませんので、ママも一緒に手伝ってあげる必要があります。
Scratch3.0が最新バージョンです。Scratch2.0の本がまだ売られていますが、もう古くなっていますので買わないように注意してください。
また、大人向けのプログラミング入門の本も以下に紹介していますので、「プログラミングの考え方」というものが理解できて、目からウロコの発想ができるようになります。興味のある方はぜひ一度読んでみてください。
文系のママがプログラミングをちょっと理解するのにおすすめです。
とりあえず最初の一冊におすすめです。プログラミング的思考についてまるっとまとめています。
親子でスクラッチが学べます
プログラミング的思考が生活のいろんな場面で生かされていたんだと、目からウロコです。
上記マンガの原作版です。漫画よりこちらのほうがわかりやすかったです。
自宅でプログラミングについて学べる教材
LEGOなどのロボット教材や、通信教育のプログラミング教材を活用することもできます。
でもお金をかけなくても、Scratch(スクラッチ)を学べる教材もあります。
たとえば、NHK Eテレで放送中の「Why!?プログラミング」という番組は、Scratch(スクラッチ)について基本的なことが知れる手頃な教材です。(2021年現在)
お笑い芸人の厚切りジェイソンさんがナビゲートを努める10分間の番組で、Scratchを使ったプログラミングのやり方を教えてくれます。番組ホームページからストリーミング再生を見ることができます。
番組ホームページではさらに細かいScratchの基本操作についての解説が見られます。
「Why!?プログラミング」について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
子どものプログラミングスクールに通う
小学校プログラミング教育は、授業時間数が少なく、物足りなく感じる子もいるかも知れません。
お子さんがせっかく興味を持っているのに、勉強したいときに勉強できなければもったいないですね。
習い事として、プログラミング教室に通わせてあげるなら能力をさらに伸ばしてあげられるかもしれません。
最近は送り迎えのいらない、オンラインのコースも人気です。
ほとんどの教室で授業は、無料で体験できます。授業はどんな感じなのか、いくつかの教室で体験を申し込んでみられるとイメージがつかみやすいですね。
まとめ
小学校で必修化になった「プログラミング教育」とはまとめると、
これからの情報社会を生きぬく上で必要になる思考力、問題解決能力である「プログラミング的思考」を子どもたちの中に育てる新たな試み
ということができます。
プログラミング教育は、ただ単にプログラマーを育てるための教育ではなく、しっかり「考えて」問題に立ち向かえるために子供を訓練するたいへん良い取り組みだと思います。
まだ、はじまって足並みの揃っていない状態ですが、もう少しすれば、さまざまアイデアが共有されて、さらに充実していくことでしょう。
記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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