世の中の急速なIT化に対応できるよう、小学校で「プログラミング教育」が必修化になった、ということはニュースでご存知の方も多いと思います。
いまや、子どもたちもプログラミングを学ぶ時代になりました。
しかし実は、小学校だけでなく、中学校や高校でも「情報」の内容が拡充されて、プログラミング教育が本格化するのをご存知でしょうか?
え、それは知らなかった。いつからですか?
さらに、2025年の大学入試から高校で必修化になる「情報」から、本格的なプログラミングの問題が出題されます。
この記事では、プログラミング教育はいつから必修化になっているんだろう、という疑問にお答えします。
義務教育でプログラミングはいつから必修化になっているの?
2017年(平成29年)に学習指導要領の改訂が10年ぶりに行われ、その目玉が「プログラミング教育」の必修化でした。
移行期間を経て、2020年度から順次、必修化になりました。
義務教育でのプログラミング教育は、2020年度から小学校で必修化がスタートし、2021年度から中学校で「技術」分野の内容を拡充する形でプログラミングが必修化になっています。
さらに、2021年度から高校でも「情報Ⅰ」が全員必修になり、現在では小・中・高、全てにおいてプログラミングが必修化になっています。
加えて、2024年度(2025年1月)からは大学入学共通テストで「情報」から出題されることが決まっています。
プログラミング必修化はいつから?
- 2020年度 小学校プログラミング教育必修化スタート
- 2021年度 中学校「技術・家庭科」の「技術分野」でプログラミングの内容を拡充
- 2022年度 高校 「情報Ⅰ」が全員必修
- 2025年 大学入学共通テストで「情報」が追加
高校や大学入試でも
高校でもこれまで選択科目だった「情報」が「情報Ⅰ」と「情報Ⅱ」に分かれ、「情報Ⅰ」が全員必修になります。
「情報Ⅰ」は、ITリテラシー、コンピュータサイエンス、テキストプログラミングなど相当高度な内容になっていきます。
そして2025年の大学入学共通テストから、情報が1つの科目として出題されることになります。
義務教育のプログラミング、小学校では何年生から?
小学校では2020年度からプログラミング教育が「全面実施」となりました。
勘違いされている方も多いですが、
「プログラミング」という新しい教科ができるわけではありません。
え、「プログラミング教育」なのに「プログラミング」を習わないってどういうこと?
文部科学省の説明によると、プログラミング教育は子供たちが「プログラミング的思考」を身につけられるようにするのが目的です。
小学校では「プログラミング」の技術を専門的に教えるのではなく、算数・理科・社会など各教科の中で横断的にプログラミングの考え方を織り込んで教える、というスタイルを取ります。
しかしそれをどのように授業に落とし込んでいくかは、それぞれの学校に任されています。
プログラミング授業は何年生から?
ほとんどの小学校では、小学3,4年生でタブレットを使ったお絵かき(図工)、リズム遊び(音楽)などでプログラミングに触れていきます。
また、5年生の算数ではプログラミングを使って「多角形」を書く授業、6年生の理科でプログラミングを使った「電気の制御」などの授業にプログラミング授業が組み込まれることが多くなっています。
その他、「国語」や「社会」など、アイデア次第でプログラミング授業を盛り込んでいる学校もありますが、全体的にまだ手探りなのが現状です。
小学校義務教育では、1学年のうち、プログラミング授業に割かれるのはたった数時間程度で、あくまでプログラミングの考え方に「触れる」程度の位置づけになっています。
アンプラグドのプログラミング授業
一方、小学校低学年でプログラミング授業に取り組んでいる学校は、まだ少ないのが現状です。低学年では、「アンプラグド」のスタイルでプログラミング授業に取り組んでいる学校もあります。
アンプラグドのプログラミング授業とは、パソコンやタブレットを使わずに、命令の書かれた紙のカードを並べて「順次」「繰り返し」「条件わけ」などのアルゴリズムを遊びながら学ぶスタイルの授業です。
義務教育のプログラミング、中学校ではいつから?
小学校でプログラミング教育が始まった翌年、
中学校では2021年度からプログラミング教育が「全面実施」となりました。
2018年〜2020年の間に移行期間があり、少しずつ「先行実施」が行われました。
冒頭でも触れましたが、実は中学校では2012年度から、技術・家庭科の「プログラムと計測・制御」という必修科目の中で、プログラミングに関する教育がすでに行われています。
では、2021年度から何が変わったのでしょうか?
中学校におけるプログラミング教育の実施方法
中学校におけるプログラミング学習は小学校とはちがい、
「技術・家庭」科の「技術」分野の範囲でプログラミング教育を行ないます。
今回はその内容をさらに充実させる形でプログラミング教育を行っていくことになります。
技術・家庭科の技術分野は以下の4項目に内容が分かれています。
技術分野の内容
(A)材料と加工の技術
(B)生物育成の技術
(C)エネルギー変換の技術
(D)情報の技術
プログラミング教育は、主にこの「(D)情報の技術」の範囲で行なっていきます。
これまで学習していた「プログラムによる計測・制御」に加えて、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミング」や「情報セキュリティ」といった内容が新しく入ります。
中学校でのプログラミング教育では、社会のIT化に慣れさせるのが目的で、コンピュータを用いた活動が多くなります。
初年度の実施状況はどうだったか、中学校プログラミング教育はいつから必修化?内容が高度でついていけない子もという記事で詳しく解説しています。
高校での情報教育は2022年度から全員必修
中学校でプログラミング教育が始まったさらに翌年、
高校では2022年度からプログラミング教育が全員必修になります。
高校におけるプログラミング教育の実施方法
これまで高校では「情報」という選択科目がありました。「社会と情報」「情報の科学」のいずれか一つを選択する選択必修でした。
このうち「社会と情報」はプログラミングを含まない内容で「情報の科学」はプログラミングを含む内容です。
ところが約80%の生徒が、プログラミングの内容を含まない「社会と情報」を選択していたというのが実情で、ほとんどの高校生はプログラミングを勉強していませんでした。
さて今回の学習指導要領の変更に伴い、
「社会と情報」と「情報の科学」を統合させた共通必修科目の「情報Ⅰ」と選択科目の「情報Ⅱ」に再編成
されることとなりました。
そのどちらにもコンピュータサイエンスやプログラミングに関する内容が含まれます。
それで今後は、すべての高校生が「情報Ⅰ」という新しい科目の中でプログラミングについて学ぶことになります。
高校でのプログラミングは小学校や中学校と同様、コーディングスキルを主としてを学ぶわけではありませんが、
AI(人工知能)やアルゴリズム
といったかなり高度な知識を学びます。
選択科目の「情報Ⅱ」ではさらに詳しく、
データサイエンスやソフトウェア開発の設計やプロセス
といったところまで学びます。
2025年から大学入試にプログラミングの内容が含まれる
さらに、今後は大学入試にもプログラミングの内容が含まれるようになるというニュースが報道されました。
大学入試センターは2021年3月に、2025年1月に実施する大学入学共通テスト(旧センター試験)の教科の中に「情報」を導入することを公表しました。
2024年度(2025年1月)に実施される大学入試からプログラミングの内容が含まれることになります。
主な内容として、プログラミングや、データサイエンスに必要な統計処理、情報リテラシーの知識などを試す問題が出題される見込みです。
大学入試のサンプル問題
ITが急速に発達し、AIが人間の仕事を奪うともいわれているこれからの時代に活躍できる人材を社会に送り出そうというねらいがあります。
ここが、小学校から始まったプログラミング教育の終着点とも言えるかもしれません。
まとめ
この記事では、プログラミング教育がいつからはじまるの?という素朴な疑問にお答えしながら、小中高とどのようにプログラミング教育が行われていくのかを簡単に概観しました。
段階 | いつから | 実施教科 | 目的 |
---|---|---|---|
小学校 | 2020年度から | 各教科の学びの中でプログラミング教育を織り込む | コンピュータに親しんでプログラミング的思考を身につける |
中学校 | 2021年度から | 技術・家庭の「技術」の分野の範囲の中で | 双方向のネットワーク技術や情報セキュリティについて学ぶ |
高校 | 2022年度から | 新しく編成された共通必修科目の「情報Ⅰ」の中で | AIやアルゴリズムなど専門的なコンピュータサイエンスの入り口を学ぶ |
大学入試 | 2025年1月から | 大学入学共通テストで「情報」から問題が出題される | IT社会を生き抜くのに必要なこれまでの学びが問われる |
日本は2030年にはIT人材が最大で79万人不足すると言われています。
また日本は国際的なIT競争において、大きく遅れを取っています。
「プログラミング教育」には、何とかしてこの状況に歯止めをかけ、国の発展に貢献できるIT人材の育成を急ごうとする政府の思惑が見て取れます。
プログラミング的思考を育てて、IT社会に慣れさせ、子供たちを新しい時代に備えさせよう、ということ自体は素晴らしい取り組みだと思います。
しかし現時点でのプログラミング教育の課題は、現場でどのように授業に落とし込めるかというところがまだ不透明なことです。
「子供たちが何を学ぶか」というより、「先生たちがしっかり教えられるのか」というところが一番の問題です。
何周か回れば、おそらく現場サイドでもノウハウが蓄積されて教案も共有されていくでしょう。
親の立場としては、「プログラミング教育」が子供たちにとって本当に意味のある教育に昇華していくことを願うばかりです。
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