最近、「STEAM教育」という言葉をよく聞くんですが、意味を調べようと思ってもロボット教室の宣伝ばかりで、何だかよくわかりません。
結局どんな目的があるのか、親は何をすればいいか知りたいです。
確かに最近、
- プログラミング教育
- ICT教育
- STEM(ステム)教育
- STEAM(スティーム)教育
などいろんなネーミングが渋滞して、
結局、なんだかよくわからない!
と感じてしまいます。
「子供のために何をしてあげればいいのか」
と、いろいろ不安になりますね。
それでこの記事では、
- 「STEAM教育」とは何か
- 「STEM教育」と「STEAM教育」それぞれの違い
- 「ICT教育」や「プログラミング教育」との違い
- STEAM(STEM)教育でどんなスキルが伸ばせるか
こういったテーマについて、できるだけわかりやすく説明したいと思います。
STEAM教育とはどんな教育?
最近良く耳にする「STEAM教育」とは何でしょうか。
STEAM(スティーム)教育は、2000年代にアメリカで始まったSTEM(ステム)教育の発展形です。
「STEAM教育」について考える前にまず「STEM教育」についてかんたんに触れておきたいと思います。
STEM(ステム)教育とは
STEM(ステム)教育の「STEM」とは
Science(科学)
Technology(技術)
Engineering(工学)
Mathematics(数学)
のそれぞれの頭文字をとった略語で「ステム」と読みます。
STEM(ステム)教育とは、
科学・技術・工学・数学という理数系教科を横断的に、複合的に組み合わせて、体感的に学んでいく新しい形の理数系教育
のことです。
さらに加えると、STEM教育は
生徒が中心になって学び、課題や答えを自分たちで考え、仲間と協力して解決していくプロジェクト型の教育
です。
理工学分野に特化した教育を行うことで、科学技術の分野でグローバルに活躍できる人材を育成することを狙いとした教育です。
STEAM(スティーム)教育とは
一方「STEAM」は
Science(科学)
Technology(技術)
Engineering(工学)
Art(芸術・人文)
Mathematics(数学)
のそれぞれの頭文字をとった略語で「スティーム」と読みます。
つまりSTEAM(スティーム)教育は、
科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の理数系の要素に、芸術(Art)のA を加えたもの
になります。
なぜ、Art が加わったか?
この「STEM教育」に「A」を加えたのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボで副所長を務め、その後名門美大のRISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)で大学長を務めたジョン・マエダです。2008年にジョン・マエダがRISD学長に就任したときに提唱しました。
彼はSTEM教育に「アート」と「デザイン」の要素が必要だと考え、
「20世紀の世界経済はサイエンス(科学)とテクノロジー(技術)が変えたけれども、21世紀の世界経済はアートとデザインが変える」
と述べています。
加えて、STEAMの「A」にはアート(芸術)だけでなくリベラルアーツ(教養)の要素も含まれるとも考えられています。
それで現在は「STEM教育」をバージョンアップさせた「STEAM教育」が新しい理数系教育の主流となっています。
「STEM教育」と「STEAM教育」の違い
「STEM教育」と「STEAM教育」にはどんな違いがあるんですか?
ここからは「STEM教育」と「STEAM教育」の違いについて見ていきましょう。
STEM教育では理数系教育が重視されていました。
しかし、実際のプロダクト(製品)を生み出していくには論理的な思考だけでなく、そこに創造や芸術、感性といったArt の要素が加わって初めて魅力的なものになります。
STEAM(スティーム)教育には、ITエンジニアを育成するサイエンス・テクノロジー教育に、このArtの要素が加えられています。
では、もう少し具体的に見ていきましょう。
少し専門的な話になってしまうので、読み流していただいても大丈夫です。
AIにできないこと=Art
STEAM教育が提唱される理由には、AI(人工知能)の台頭も関係しています。
これから先の時代は、AIが人間の仕事を奪って人間に変わって仕事をするようになると言われています。
しかし実際には、AIにはできない「人間にしかできない」領域もあります。
それが、クリエイティビティやホスピタリティといった分野です。
たとえば、科学技術を使って世の中で困っている人のために、ソリューション(解決手段)を与えることができます。
しかしそのためには、そもそもその問題に気づく必要があります。
困っている人がいることに気づき、その人が何に困っているのかに気づき、何とかしてあげたいと思う(ホスピタリティ)気持ちが働かなければなりません。
人間的な思いやりの気持ちや気遣いの精神があって初めて、そのための解決策を提供できます。
このように一つの魅力的なソリューションを生み出すためには
- ホスピタリティ
- 自発性
- 判断力
- 創造性(クリエイティビティ)
- デザイン
といったヒューマンスキルを身につける必要があり、STEAM教育ではこれらを
Art
と考えています。
STEAM教育は、サイエンス・テクノロジーにこうした Art の要素を加えることによって、どんどん複雑になっていく社会で、人々の課題に気づき、課題を柔軟に解決できる優秀な人材を育成する目的があります。
STEAM教育は21世紀型の新しい教育です。
ICT教育やプログラミング教育との違い
STEAM教育は、最近よく聞く「ICT教育」や「プログラミング教育」とはどう違うんですか?
では、STEAM教育と、「ICT教育」「プログラミング教育」との違いについて考えましょう。
ICT教育
ICTとは “Information and Communication Technology” つまり、「情報通信技術」 の略称です。
かんたんに言うと、ICTは
インターネットやパソコン、タブレット端末などのデジタル機器を用いた通信技術
のことです。
それでICT教育は、パソコンやタブレットを授業に活用して使いこなせるようになることを目的としています。
今の時代、ICTをまったく使えない大人が社会に出ていくことなど考えられません。
子どものときから基本的なPC操作や、インターネットリテラシーを学んでおくのは当然と言えます。
ただ、全国の小学校でICTの整備がまだ十分に整っていない現状があります。
詳しくは過去の記事で說明していますのでご参照ください。
プログラミング教育
一方プログラミング教育は、ICT教育よりもう少し踏み込んだ内容になります。
プログラミング教育は、子どもたちがパソコンやインターネットが使えるようにするだけでなく、
コンピュータの働き、特に身の回りの便利なデジタル機器やサービスは、すべて人間がプログラミングすることによって制御されている
ことを理解させる目的があります。
実際のコーディングスキルを学ぶわけではありませんが、
プログラミング的思考(=論理的に問題を解決する思考力)を学ぶ
ことを目的としています。
STEAM教育とプログラミング教育との違い
STEAM教育とプログラミング教育では、フォーカスする教科範囲が少し異なります。
STEAM教育は理数系を横断しながら教えますが、日本のプログラミング教育の範囲は、算数や理科以外にも、国語や社会や家庭科の授業にもまたがっています。
STEAM教育は科学者やエンジニアの育成を目指しますが、プログラミング教育では社会人として役立つ、論理的な考え方を育成します。
プログラミング教育はSTEM・STEAM教育の前段階といった位置づけになるかもしれません。
日本におけるSTEAM教育
それで結局、日本のSTEAM教育はどうなっているんですか?
残念ながら日本におけるSTEAM教育は先進国の中でも非常に遅れています。義務教育での導入は一部の私立の小中一貫校にすぎません。
しかし高校では、文部科学省が指定したスーパーサイエンスハイスクール(SSH) が各都道府県にあり、そこでの受験に合格すれば、STEAM教育の要素を取り入れた教育を受けることができます。
一方、民間の企業や教育機関ではSTEAM教育の研究が進んでいて、それらの企業が運営する「ロボット教室」や「プログラミング教室」がこの数年で急増しています。
実のところ「STEAM教育」についてのネットで調べようとすると、検索上位にヒットする記事はほとんどの場合、ロボット教室を運営している企業が書いた記事です。
そのため、「STEAM教育」について調べようとすると、教室の宣伝がたくさん出てくるわけです。(ちなみに当サイト「くめるこ」は個人が趣味で運営しております)
STEAM(STEM)教育でどんなスキルが伸ばせるか
例えば、うちの子供をロボット通わせたらどんなスキルが身につくのでしょうか?
STEAM教育で伸ばせるスキルは、
- 論理的な思考力
- 判断力
- 課題を見つける能力
- 問題解決能力
- 創造性
- 自発性
- 表現力
などがあげられます。
さらに
- サイエンスに関する知識
- IT
- 初歩のプログラミング
- 仲間と協力してプロジェクトを達成する力
などのスキルも体感型のSTEAM教育を通して身についていきます。
従来の理数系教育では、何か一つ「答え」となるものがあって、みんなをその一つの答えに向かわせるという教え方をしていましたが、STEAM教育では決まった答えがありません。
むしろ「答え」というものは一つではなくて、これでだめだったら別の方法を試して、といった柔軟な考え方をします。
子供たちに行なうSTEAM教育は「勉強」というより「遊び」の要素が多くを占めます。
そもそも「遊び」こそが子供たちにとっての「学びの本質だ」と言えます。
STEAM教育は、机に向かって静かに暗記するような勉強ではなく、実践的、創造的で、ひとことでいうと「わくわく」するような学びの機会を子供たちに与えます。
数学者・ピアニストでSTEAM教育である中島さち子さんは、STEAM教育について
科学や技術を学ぶというより、科学者や研究者のように考え、アーティストやエンジニアのようにモノをつくる
と要約しています。
STEAM教育はこのような21世紀型のスキルを育むことを意図しています。
まとめ
この記事ではSTEM教育とSTEAM教育について解説してきました。
STEAM教育をいろんな言葉で言い表してみると
- 理数系教科とアートの融合
- プロジェクト型の教育
- 体感型の教育
- 遊びながら学べる
- ワクワクするような学びの機会
- 決まった答えがない
- 実践的・横断的・創造的
- もっと自由なイメージ
- 創造性や感性を育てる
- 科学者のように考えアーティストのように作ろう
- 自分で学び自分で理解していく子供を育てる
- 21世紀型の教育スタイル
こんなフレーズが出てきます。
これらをモザイクのように散りばめて眺めてくるとSTEAM教育の全体像が見えてくると思います。
自分たちが子供の頃にこんな教育に出会ってればよかったのに、とつくづく思います。
この記事がお子さんが良い教育を受けられるように願う保護者の皆様のお役に立てば嬉しいです。
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